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風評被害と最大公約数的安全

昨夕(4/8)、群馬県産のホウレンソウとカキナの出荷制限が解除された。で、どういうわけだかコンナ私のところへ某新聞社の前橋支局(?)の記者さんからコメントを求める電話が来た。ちなみに採用されたかどうかは不明。

こう答えてみた
1.零細ながらも経営者のとしての立場からはよろこばしい。だが、今問題になっている放射性物質による汚染は主として付着したものと考えられる。今後は土壌中の放射性物質を作物が吸収して汚染が深刻になる可能性があり、これが心配だ。この汚染は洗い流すことができないからだ。必須栄養素であるカリと同じように植物が吸収するといわれるCs(セシウム)の濃度が特に夏の果菜類(キュウリ、トマト、ナスなど)でどうなるか、大変心配している。
2.行政サイドが、一定の基準値を定めて出荷制限をする意味合いは認める。だが、放射性物質による健康影響は、暫定基準値のを下回るような低レベルのものについては「はっきりしたことがわからない」から、「確率的な影響はあると考える」というのが国際的に支持されている考えだと聞いている。
そうであるならば、暫定基準値以下でも、汚染された農産物は購入しない、という選択肢もありうるわけで、こうしたことは私は風評被害ではないと思う。
生産者としては、暫定基準値を下回ったことだけで「私の農産物を買ってください」という気持ちにはなれない。今後の課題としては、食べ物として高品質のものをつくる、ということと、自身のもつ情報を開示することを含め、いかに消費者の方と強い信頼関係を作ることができるか、ということが今後より重要になってくると考える。

さらに、「出荷制限による政府からの補償について希望することは?」と聞かれた。
3.補償については、原発事故による影響を考えれば、すべて補償しきることは既に不可能というレベルに達していると思う。
私についていえば、現状はそれほど実害を受けていない幸運な立場だが、今後はどうなるかわからない。その状況に応じて補償は受けていきたいという気持ちはある。しかし、補償が本当に必要なのは、原発に距離が近く、おそらくは生産自体が困難になる地域の人々だと思う。優先順位から言えばそちらが先だ。
政府が責任を持って可能な補償は確実に行うべきだが、より重要なのはこの放射能汚染を受けて、私たちの食料を生産する産業としての農業をどうしていくのか?というビジョンを如何に早く打ち出すか、ということだと思う。


ところで世間や政治家さんの間では風評被害のことがよく話題になっている。だが、上に述べたように暫定規制値を下回っている農産物を買ってもらえないことをもって「風評被害」というのであれば、私はそうでないと思う。基本的に最終消費者に限って、ではあるが。

なぜなら、低い線量でも健康影響は「ただちに」ないかもしれないが、「将来は」ありうるとしか思えない、という気持ちがよくわかるからだ。
原子炉がバクハツしていない、という前提において、暫定規制値で管理された食料と水を摂り続けた場合、食料経由の年間内部被曝だけで最大7ミリシーベルトの実効線量になりうる。この数字をどう解釈するかどうかは本人次第。国に「あんたは安全だ」といわれる筋合いのものじゃないのだ。
暫定規制値はあくまで、「確率的には多くの人がまぁ大丈夫だ」という程度の数値だと思う。「多くの人」のうちに私や私の家族が入る保証はない。だからこれは「最大公約数的安全」でしかない。

最大公約数的安全でよいかどうかをきめるのは、本人かその家族しかいない、と思う。決めるファクターは放射性物質だけではない。その人自身の社会的状況、家族的、身体的もろもろの個別的事情・背景のなかから、食べ物としての価値を含めて、それを選択するか否かをきめるのだと思う。
自動車事故の危険だけを考えたら、自動車に乗る人はいなくなるはずだ。実際には自動車をのることによる有用性と自動車事故との危険性を潜在的にははかりにかけている、と思う。

含まれる放射性物質が、低い確率的危険にとどまっている、という前提条件がある場合に限ってだが、それは実は今までもあった食べ物の危険と大きくは違わないはず。(同じだとはいわない)
(安全・安心を超えて 安心・安全を超えて2)
その中で、その食べ物を選択することも、拒否することも、その人自身の自由だ。その総和が社会的選択になる。社会的選択が先にあるわけではない。
個人的選択を「風評被害」ときめつけるのは、一歩コワイ社会に近づいてしまうような気がするんだよ。

一番の問題はその自分で決めた結論を、自分が胸をはって説明できる材料を提供されていない、ということだと思う。
しかし、今現在の同種の問題は、食べ物を介してのものよりも、直接的な放射線の被害を深刻に受けているはずの30km圏外の人々にとってより深刻なんじゃなかろうか?。
情報を持っている方々、ホントになんとかならんのだろうか。

追伸:ネットで話題になっていて、一時削除されまくりで見ることができなかった。しかし、今は安定?しているのかも。
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作物とセシウム

4/9 19:30、セシウムの件で私なりの解説(→以降)を加筆しました。

ノルウェー気象研究所のシミュレーションでは、4/7-8にかけて放射性物質が日本列島を縦断する予想になっていた。
各地の放射線量の推移を注意してみていたが、幸い顕著な上昇は見られなかった。気象データは豊富に入手可能だろうから、放出される放射性物質が想定よりも少なかったのではないだろうか。そうだとすればちょっとうれしい。

ところで去る3/28には日本土壌肥料学会から興味深い情報のアップがあったようだ。

情報:放射性核種(セシウム)の土壌-作物(特に水稲)系での動きに関する基礎的知見

大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算によると、農産物が吸収することで問題になる放射性物質としてCs(セシウム)とSr(ストロンチウム)があげられている。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)のサイトでつくば市での放射性核種の分析が詳しく発表されているが、Srは検出されていない。一方、Csはヨウ素に比べればかなり少ないものの、決して無視できない量が降下していることがわかる。


土壌肥料学会の情報を一部抜粋させてもらっちゃう。百姓にとっちゃ重要な情報だ。学会さん、ありがとう!

1.CsはK(カリ)やNa(ナトリウム)と元素としての挙動に類似性がある。
→Kは植物にとって3大栄養素のひとつ。だから、植物はCsをKと同じメカニズムで吸収する。

2.土壌中のCs-137の分布を粘土、シルト、砂に分けて調べた例では、半分以上のCs-137が粘土画分に存在しており、また、土壌への吸着の強さや様式で分けると、K、NH4等の陽イオンと置き換わることができるイオン交換態(置換態とも言う)が10%、有機物との結合態が20%、粘土鉱物等との強固な結合態が70%との報告がある(Tsukadaら, 2008)。
→植物の根が吸収する物質はイオン交換態のものが多い。イオン交換態の物質は土壌中の水に溶けているほか、土壌中の粘土鉱物にも電気的に吸着されているが、その中の結合が強くない部分は吸収できると考えられている。一方、最近では一部のアミノ酸といった有機態の物質も吸収するといわれるようになってきているが、植物が吸う割合としてはイオン交換態の10%でほとんどと考えていいかもしれない。残り20%の有機態のCsは微生物に分解されて徐々に土壌水に放出され、降下したCsのうち70%に達する粘土鉱物に吸着されているCsは作物にも吸収されず長期間土壌に残ることになる。
これは地力の元のひとつである粘土鉱物の力がCsに奪われることも意味し、堆肥等による土壌改良がより重要になってくるだろう。

3.土壌中のCsは、下層への溶脱等と放射壊変により減少していく。滞留半減時間は水田作土で9~24年、畑作土で8~26年と報告されている(駒村ら, 2006)
→これはあくまで半減時間。影響は2-3世代続くというかんじか。

4.土壌にCsを添加した実験では、添加10日後に水で抽出されるCsは添加量の0.1%という事例が報告され、その時のイオン交換態は26%であったが、約1年後には11%にまで減少した(塚田ら, 2008)。
→この試験に使われたのと同じ土壌において降下したCsは、降下10日後においてそのうちの0.1%がすぐに水にとけ、そのうちの26%、すなわち降下したCsの0.026%が作物に吸収される。しかし、(その後降下がなければ)1年後には作物が吸収できるCsは降下量の0.011%以下になる。

5.Csの作物への吸収経路は、大気から作物体に沈着し吸収される葉面吸収と、一度土壌に降下したのち根を通じて吸収される経根吸収がある。
→作物の汚染経路としては、葉面に吸着されるものだけでなく、葉面が吸収するもの、根が吸収するものがある。

6.土壌に添加されたCsは、土壌の粘土鉱物等に強く結合される。したがって、水溶性の部分は時間の経過とともに減少する。一方、作物は土壌溶液中の養分(水溶性の部分)を主に吸収するので、作物が吸収するCs量も、土壌へのCs降下後の経過日数とともに減少することが知られている。例えば牧草栽培実験では、Cs添加直後に播種した場合よりも、数ヶ月後に播種した場合の方が牧草中Cs濃度は低かった(武田ら, 2009)
→CsはKやカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)よりも土壌中の粘土鉱物に強く結合される。だから、降下がおさまれば、水に溶けて作物に吸収されるセシウムは減少する。ちなみに減少する原因は、降雨等によって流亡することと、それ以前に栽培された作物が吸収して、それを牛が食べたり、百姓が持ち出すからである(・・・)。
流亡した分は川に入り、最終的には海に行くだろう。

7.土壌から白米への移行係数(白米1 kg当たりの放射能濃度/土壌1 kg当たりの放射能濃度の比)は0.00021~0.012で、土壌中のK濃度が高いほどCs-137の作物への移行が少ない傾向にあるとの報告もある((^^))施用資材によっても移行係数は変化し、通常のNPK三要素を施肥した場合に比べK肥料を無施用で高くなり、堆肥施用で減少するとの報告がある(津村ら, 1984)。(もういちど(^^))
→植物のミネラル吸収では拮抗作用という現象が知られている。K、Ca、Mgを含む植物にとって重要なミネラルはそれぞれプラスイオンだ。これらのうちのどれかが多くなれば別のミネラルが吸収されにくくなる。施肥設計でミネラルバランスに注意しなくちゃいかんゆえんだ。
Csはプラスイオンであるだけでなく、Kとよく似ているわけであり、拮抗作用が起きる元素がひとつ増えた、ということになる。このことを理解することにより、Csの吸収を抑制することがある程度可能になるだろう。

8.Cs-137とKはイネ体内では比較的類似した挙動を示す。作物に吸収されたCs総量のうち玄米に移行した割合は12~20%(津村ら1984)である。糠部分で白米より高い濃度にあることが知られており(Tsukadaら, 2002b)、白米のCs-137濃度は玄米に比べ30~50%程度低い(駒村ら, 2006)。

9.イネの場合、白米とそれ以外の部位のCs存在比率は7 : 93との報告がある(Tsukadaら, 2002b)。非可食部の家畜への給与、堆肥化、鋤込み、焼却等の処理により再び放射性Csが食物連鎖を通じて畜産品に移行し、あるいは農地に還元される等の可能性がある。第一義的には放射性Csの吸収抑制対策の確立が重要であるが、非可食部の処理についても考えておく必要がある。((ー_ー)!!)
→白米の場合、土壌中に存在するCsの0.021%から1.2%が移行する。しかし、それはイネの吸収したCsのわずか7%であり、残りは糠を含むイネのそのほかの部分に吸収されている。

大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算では、セシウムの濃縮係数(土壌中の濃度に対して生物(作物)取り込む割合)を野菜で0.1 ~ 0.15 米麦粒にて 0.02 ~ 0.03としていた。その24年後の1984年の論文ではその数値と同義と思われる「移行係数」が米で0.00021~0.012とのことなので、野菜でも10%を切るかもしれない。

それにしても稲わらや籾殻というたいへん有用な資源の取り扱いについては、もっと調べる、考える必要がでてきた。これはたいへん困ったことになる可能性がある。
もうひとつ、私は今後の土壌分析でのKの値が気になる。これはCs以外のKの値が出てくるのだろうか?それともCs込の値なのだろうか?それによって施肥の考え方が変わってくる。
(>Mさん、どうでしょうか?)
プロフィール

rainfrog23

Author:rainfrog23
就農15年目、群馬県高崎市の野菜農家のおやじ。30代までは都心に勤めるサラリーマンだった。生き物がたくさんいる環境での仕事を望み百姓志願。農園の名前、みずき彩菜(さいさい)です。

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